校長より生徒の皆さんへ その43 名 人
生徒の皆さんは、日本の戦国時代の剣客であった塚原卜伝(ぼくでん)の名を聞いたことはあるでしょうか。
武勇伝も多く、その中には次のような話があります。
卜伝が剣の極意を伝えようとしていた優秀な弟子がいました。
道端に繋がれた馬の後ろを通ろうとした際に、その馬が後ろ脚を跳ね上げます。
とっさのところでそれをかわした弟子を、周囲にいた方々は褒め称えますが、卜伝だけは満足しなかったそうです。
そして、極意を授ける器ではない、とつぶやきます。
訝った周囲の方々が卜伝ならどうするか尋ねたところ、彼は、馬からかなり離れたところを通ったそうです。
さて、その極意とは?
馬の跳ねた脚を避けることができたのは優れた技にも見えるが、馬は跳ねるものだという概念を失念して近づいた迂闊さを忘れてはいけない、とのことでした。
卜伝からすると、その弟子は達人ではあっても名人の域には達していない、ということのようです。
道を究める奥深さを感じます。